中小企業診断士の一次試験では、経営に関する様々な知識を学習し、その範囲は全7科目です。
経営に関する幅広い知識を体系的に学習することができる点は魅力的な試験ですが、試験に合格することを考えれば、膨大な学習範囲を限られた時間の中で習得することは簡単ではありません。
中小企業診断士の一次試験を攻略するためには、各科目の特徴・傾向を知り、それぞれの特徴に合わせた効果的な学習を進めることがカギとなっています。
この記事では、中小企業診断士の一次試験について、各科目の合格率・難易度、それに基づく効果的な学習を進めるうえでのポイントを解説します。
中小企業診断士の一次試験は、平均合格率が約20%ほどの難しい試験です。
しかし、効果的な対策を知り、計画的に学習を進めることができれば、限られた時間を活用した最短合格も可能です。
科目ごとの難易度と勉強のポイントを理解して、確実に合格に近づける学習計画を立てる際の参考にしてください!
- 中小企業診断士・一次試験の概要
- 全7科目それぞれの難易度や合格率
- 私が各科目に割いた勉強時間と試験結果
- それぞれの科目の難しさと勉強を進めるコツ
中小企業診断士・一次試験の全体像
まずはじめに、中小企業診断士・一次試験の概要をお話しします。
全7科目の幅広い試験範囲
中小企業診断士の一次試験では、全7科目の経営に関する幅広い内容を学習します。
具体的な試験科目・日程などについては以下の通りです。
日程 | 科目 | 配点 | 試験時間 |
---|---|---|---|
1日目 | 経済学・経済政策 | 100点 | 60分 |
財務・会計 | 100点 | 60分 | |
企業経営理論 | 100点 | 90分 | |
運営管理(オペレーション・マネジメント) | 100点 | 90分 | |
2日目 | 経営法務 | 100点 | 60分 |
経営情報システム | 100点 | 60分 | |
中小企業経営・政策 | 100点 | 90分 |
経営戦略やマーケティングなどの企業活動はもちろん、財務・法律・ITなど、試験内容は多種多様です。
試験範囲が広いため対策には時間と労力が必要ですが、ここまで経営に関する知識を網羅的に学習できる資格は他にありません。
膨大な試験内容を、限られた時間の中でいかに効率的に学習できるかが合格のカギになる試験です。
中小企業診断士・一次試験の合格基準
中小企業診断士・一次試験の合格基準は以下の通りです。
①第1次試験の合格基準は、総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
②科目合格基準は、満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
100点×7科目の試験ですので、700満点中420点を取り、かつ40点以下の科目が無ければ合格です。
また、総得点が420点に満たなかった場合でも、60点を超えた科目があれば「科目合格」として扱われ、その科目については2年間の免除を受けることができます。
つまり、全7科目をバランスよく学習し、総得点で6割超えを目指す必要があります。
苦手科目を得意科目でカバーしたり、科目合格を活用しながら数年で合格を目指すなど、ご自身の学習環境に合わせた合格戦略を立てることも重要です。
中小企業診断士・一次試験の合格率
中小企業診断士・一次試験の合格率は、おおよそ20%~30%程度で推移しており、過去18年間の平均は24.8%でした。
中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移 suii_moushikomisha.pdf (j-smeca.jp)を元に作成
合格率が約25%と、4人に1人しか合格できない試験ですので、やはり難関試験と言えるでしょう。
最近では、科目合格制度の導入・中小企業診断士試験の受験者数の増加を受けて、絶対評価である一次試験の合格率は高まりつつあります。
合格率が高まっている一方で、合格率の調整の調整のために試験が難化する可能性も考えられるため、計画的な学習戦略を立てて対策を進めることがますます重要となっています。
日程や費用
中小企業診断士・一次試験の日程・受験費用は以下の通りです。
日程:8月第1週の土日(例年の傾向)
費用:14,500円
ここまでが、中小企業診断士・一次試験の概要となります。
全7科目にわたる幅広い試験範囲に対して、バランスを見ながら全体で6割以上を得点しなければなりません。
そこで以下では、各科目の合格率・難易度を分析し、効果的な学習を進める上で意識するべき学習のポイントについて解説していきます。
経済学・経済政策
ここからは、中小企業診断士・一次試験の各科目について見ていきます。まずは「経済学・経済政策」です。
経済学・経済政策の概要
経済学・経済政策では、マクロ経済・ミクロ経済を学習し、経済環境を把握できる基礎知識を得ることで、経営コンサルタントとして外部環境に合わせた効果的な戦略・施策を助言できるようになることが学習の目的となります。
企業経営において、基本的なマクロ経済指標の動きを理解し、為替相場、国際収支、雇用・物価動向等を的確に把握することは、経営上の意思決定を行う際の基本である。また、経営戦略やマーケティング活動の成果を高め、他方で積極的な財務戦略を展開していくためには、ミクロ経済学の知識を身につけることも必要である。このため、経済学の主要理論及びそれに基づく経済政策について、以下の内容を中心に知識を判定する。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
経済学・経済政策では、経済全体の情勢を把握する「マクロ経済学」から、消費者の行動傾向を把握する「ミクロ経済学」まで、経済学の基本的な考え方を網羅的に学習する科目です。
経済学の基本モデルである「無差別曲線」や「IS-LMモデル」など、数字やグラフを使った計算問題も出題されます。
経営コンサルタントとして経済情勢を把握したうえで的確なアドバイスが出せることはもちろんのこと、日々の経済に関するニュースなどを深く理解できるようになることもメリットです。
経済学・経済政策の合格率・難易度
経済学・経済政策の、過去18年間の合格率平均は18.7%です。
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成
平均合格率が20%を下回る、難しい試験となっていることが分かります。
さらに、年度により合格率の変動が激しいことも特徴です。2013年の合格率2.1%は驚きの難易度ですね。
近年では、頻出の論点でも応用的な選択肢が含まれているなど、深い理解がないと正誤の判断ができない問題も増えており、合格が難しくなってきている難易度★★☆の試験科目です。
二次試験との関連度
経済学・経済政策の二次試験との関連度:★☆☆
経済学・経済政策は、二次試験との関連はほとんどありません。
そのため、一次試験を突破することに特化した学習を進め、なるべく時間をかけずに学習を進められることが理想的です。
私の勉強時間と試験結果
勉強時間:155時間 /1,313時間
試験結果:68点 /100点
私自身、大学で経済学を専攻していたこともあり、経済理論やモデルに少しだけ馴染みがありました。
そのため、他の科目に比べて比較的短めの勉強時間で試験に望んでいます。
勉強時間のほとんどを、基本的な理論の理解を深めるインプットと過去問演習だけ繰り返し、どのような角度から問われても答えられるように準備していました。
経済学・経済政策の難しさ
経済学・経済政策の合格を難しくしている原因として、以下が考えられます。
- 初学者だと、経済学の理論・モデルに慣れるまで時間がかかる。
- グラフを読み取る問題や、計算問題などの数学のような問題も出題される。
- 経済動向など、経済に関する時事問題が出題される可能性がある。
- 1問当たり4点が配点されるためミスが響く。
- すべての選択肢の正誤を判断できないと正解できない問題が出題される。
経済学では、経済学特有の理論やモデルを用いて分析を行います。
経済学を攻略するには、この考え方に慣れた上でグラフや計算を駆使して問題を解かなければなりません。
またこれが厄介なんですが、「正しい選択肢を1つ選べ」ではなく、「a:正、b:誤、c:正」のように全ての選択肢の正誤の判断ができないといけない問題がたくさん出てきます。
経済学特有の考え方を理解することに時間がかかることに加え、時事問題の出題・選択肢のクセがあることで、試験対策が難しくなっていると考えられます。
効果的に学習を進めるコツ
経済学・経済政策の難しさの原因を踏まえて、効果的に学習を進める上で意識するべきポイントは以下の通りです。
- 内容に深入りせず、試験に必要な内容のみをしっかりと理解する。
- インプットの段階で、自分で簡易的なグラフを書いて理解する。
- どのような角度から問われてもいいように、過去問には多く触れておく。
- スキマ時間があれば、経済ニュースに目を通しておく。
経済学・経済政策の攻略に最も重要なのは、「重要論点を完璧に理解する」ことです。
経済学は、理論を追求しようとすればキリありませんし、試験で出題される内容・レベル感は変化していません。
あくまで診断士試験で正誤の判断に必要な箇所だけを、深く理解することを意識しましょう。
試験攻略に必要な内容はテキストと過去問に集約されているため、まずはテキストに記載のある内容を完璧にしたうえで、過去問を使って実践に慣れていくことが重要です。
財務・会計
次に、「財務・会計」についてお話しします。
財務・会計の概要
財務・会計では、財務諸表の読み取り・分析や、投資の採算性の分析など、企業のお金回りについての知識を学習します。
財務・会計に関する知識は企業経営の基本であり、また企業の現状把握や問題点の抽出において、財務諸表等による経営分析は重要な手法となる。また、今後、中小企業が資本市場から資金を調達したり、成長戦略の一環として他社の買収等を行うケースが増大することが考えられることから、割引キャッシュフローの手法を活用した投資評価や、企業価値の算定等に関する知識を身につける必要もある。このため、企業の財務・会計について、以下の内容を中心に知識を判定する。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
どのような事業を行う企業であっても、会社経営を行う以上、資金の管理・運用は切っても切り離せない重要な要素となります。
そのため、経営コンサルタントとして活動する中で、会社経営におけるお金回りの知識を知っていることは欠かせません。
財務・会計で学習する具体的な内容には、「財務諸表」を読み取って会社の財政状態を分析したり、「NPV」を用いて投資意思決定を行うなど、会社のお金回りに関するあらゆる知識が試験範囲に含まれています。
法規制によって定められる会計・帳簿の細かいルールから、数値を用いた計算問題が出題されるため、全7科目の中でも対策が難しい科目のひとつとなっています。
財務・会計の合格率・難易度
財務・会計の、過去18年間の合格率平均は14.3%です。
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成
財務・会計は、全7科目の中で最も平均合格率が低い最難関科目となります。
財務諸表の勘定科目・仕訳方法、投資の採算性の計算方法など、覚えなければならない知識が膨大なことに加えて、短い試験時間の中で正確な計算が求められるなど、対策に時間がかかる難易度★★★の科目です。
二次試験との関連度
財務・会計の二次試験との関連度:★★★
財務・会計は、二次試験の「事例Ⅳ」と直結している、二次試験との関連度が高い科目です。
二次試験では、一次試験で学習した数式を用いて、事例企業の財政状態や投資意思決定を判断する内容が出題されます。
財務・会計で学習した知識を二次試験でそのまま使うことになるため、二次試験を見据えて財務・会計を得意になっておくことが有利に働きます。
私の勉強時間と試験結果
勉強時間:174時間 /1,313時間
試験結果:56点 /100点
まず結果として、多くの勉強時間を割いたにも関わらず、あと1問というところで60点には到達できませんでした。
勉強内容の内訳としては、私は診断士試験の前に「簿記2級」を取得していたため、財務諸表・仕訳などは復習のような形となりました。
そのため、勉強時間のほとんどを、簿記では学習しない「経営分析」や「NPV」に割いていました。
会計に関するルールや仕組みなど、計算問題以外で多くの失点をしたため、知識問題の対策にもっと時間を割くべきだったと感じています。
財務・会計の難しさ
財務・会計の合格を難しくしている原因には、以下が考えられます。
- 簿記に触れたことが無いと、財務諸表の基礎から学習を始めなければならない。
- 覚えなければいけない知識・計算式の数が多い。
- 投資意思決定の計算問題は難易度が高い。
- 試験時間が60分と短く、素早く正確な計算が求められる。
- 会計・帳簿のルールに関する難題が増えている。
財務・会計の難しさの所以は、「膨大で細かい学習内容」と「難易度の高い計算問題」でしょう。
経営分析からNPVの算出など、頻出の計算問題は暗記しなければなりません。
また、地味に厄介な「会計・帳簿のルール」の細かい内容をという問題が増えてきています。
幅広い学習範囲を網羅的に理解することに加え、難しい計算問題に本番で対応できるまでの経験・慣れが求められることが、財務・会計で安定した得点を取ることが難しい理由となります。
効果的に学習を進めるコツ
財務・会計の難しさの原因を踏まえ、効果的に学習を進める上で意識するべきポイントは以下の通りです。
- 頻出の計算問題は、数式を暗記して何度も解いておく。
- 「DCF」や「NPV」の計算は、二次試験でも使うので早めに得意になっておく。
- 会計・帳簿のルールは、過去問で出てきた箇所を覚えていく。
- 過去問演習の段階で、電卓を使わず暗算に慣れておく。
まず、インプットで重要なのが、「頻出・重要論点に絞って学習を進める」ことです。
会計・帳簿に関するルールは非常に細かく、すべてを覚えることは不可能に近いでしょう。
さらに、試験範囲が膨大とはいえ、問われる内容は大きく変化していません。
そのため、試験の攻略に必要な知識に絞ってインプットを進め、理解を深めておくことが効率的です。
また、「インプット後に早い段階でアウトプットに入る」ことも大切です。
上述した通り、計算問題の出題も多い財務・会計では、実戦形式で問題を解くことに慣れておくことが求められます。
重要論点に絞ったインプットを進め、早い段階でアウトプットに入り解答に慣れておくことを意識しましょう。
企業経営理論
次に3科目目、「企業経営理論」です。
企業経営理論の概要
企業経営理論は、全7科目の中で最も「経営コンサルタントらしい」内容を学習する科目となっており、会社が経営を継続し、成長していくための戦略・施策についての具体策を学習する科目となっています。
企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。また、近年、技術と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性が高まっており、こうした知識についても充分な理解が必要である。このため、経営戦略論、組織論、マーケティング論といった企業経営に関する知識について、以下の内容を中心に判定する。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
企業経営理論は、企業の戦略の方向性を検討する「経営戦略論」、事業の拡大を進めるための「マーケティング論」、組織の在り方・人材活用を検討する「組織論」から構成されています。
企業が経営を継続し成長していくためには、市場の激しい競争に打ち勝つための戦略・目標を決め、それらを正しく実行するために、人材などのリソースを正しく効果的に活用し、利益を残さなければなりません。
そして企業経営理論では、あらゆる中小企業に対しても効果的な助言ができるよう、企業が経営を進めるうえでのプロセスの中で、どのような戦略・施策を採るべきかを学習するものであり、だからこそ「経営コンサルタントらしい」学習内容と言われている科目です。
企業経営理論の合格率・難易度
企業経営理論の、過去18年間の合格率の平均は16.9%です。
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成
企業経営理論についても、平均合格率が20%を下回る難関試験であり、年度による合格率の変動が激しいことも特徴的です。
企業経営理論の難しさについても後ほど解説しますが、経営に関する幅広い知識の理解に加え、選択肢の文章を読む取る読解力・思考力が求められます。
他の科目以上に知識の深い理解が求められる、難易度★★★の科目となっています。
二次試験との関連度
企業経営理論の二次試験との関連度:★★★
企業経営理論は、二次試験の「事例Ⅰ」と「事例Ⅱ」に直結しており、全7科目の中で最も二次試験との関連度が高い重要な科目となっています。
企業経営理論で学習する戦略論・マーケティング論などの具体策は、事例Ⅰ・事例Ⅱの筆記試験でそのまま使うことになるため、企業経営理論を早い段階で得意になっておくことで二次試験の対策をスムーズに進めることができます。
私の勉強時間と結果
勉強時間:224時間 /1,313時間
試験結果:79点 /100点
覚えなければならない知識量も多く、二次試験との関連性も高い科目であるため、勉強時間を長めに確保しました。
勉強の内訳・進め方としては、問題集・過去問を使ったアウトプットに多くの時間を割くことで、特徴的な選択肢の文章になれながら知識の定着を図っていました。
インプットとアウトプットを上手に使い合わせるながら学習を進めることで、企業経営理論で安定して6割以上を得点できる基礎力の向上に繋がります。
企業経営理論の難しさ
企業経営理論の合格を難しくしている原因には、以下が考えられます。
- 用語を暗記しているだけでは文章の正誤を判断できない。
- 5択問題が多く、選択肢の文章も長いため、論理的に文章を読み取る能力が求められる。
- 会社の組織や戦略、マーケティングなどには正解がないため、抽象的な内容も多い。
- 労働関連法規では、かなりの量の法律を暗記しなければならない。
企業経営理論の最大の難しさは、「用語を暗記するだけでは正誤の判断ができない」ことです。
企業経営理論は「国語の問題」と言われることもあり、選択肢の文章が長く、文章の前後の論理性を判断する文章読解力が求められることが特徴です。
そのため、膨大な知識量が定着していることだけでなく、その知識を生かして文章を正確かつ素早く読み取る力が求められることが、試験で安定して得点することが難しい理由となっています。
効果的に学習を進めるコツ
企業経営理論の特徴を踏まえて、効果的に学習を進める上で意識するべきポイントは以下の通りです。
- 正誤の判断・二次試験に備えて、用語の暗記だけでなく深い理解を意識する。
- 文章が長い選択肢に慣れるため、アウトプットを大切にする。
- 過去問に出てきた知らない用語も、解説には目を通して頭に入れておく。
- 労働関連法規に時間を割きすぎない。
企業経営理論の学習を進める中で意識すべきは、「知識の理解を深めるインプットとアウトプットのバランス」です。
上述しました通り、企業経営理論の選択肢の正誤を判断するためには、重要な論点の知識が定着していることに加え、複雑で長い文章構成をした選択肢を正確に読解しなければなりません。
そのため、知識のインプットをアウトプットを使い合わせ、一次試験では複雑な文章を正しく読み取ること、二次試験では事例企業に助言が記述することに慣れるための訓練を積むことが重要です。
運営管理(オペレーション・マネジメント)
次に、4科目目「運営管理(オペレーション・マネジメント)」についてお話しします。
運営管理(オペレーション・マネジメント)の概要
運営管理(オペレーション・マネジメント)は、製造業や卸売業・小売業を営む企業が行う、生産・販売オペレーションについて学習し、より効率的に生産・販売を進めるためのアドバイスを行うための知識を会得することが目的となっています。
中小企業の経営において、工場や店舗における生産や販売に係る運営管理は大きな位置を占めており、また、近年の情報通信技術の進展により情報システムを活用した効率的な事業運営に係るコンサルティングニーズも高まっている。このため、生産に関わるオペレーションの管理や小売業・卸売業・サービス業のオペレーションの管理に関する全般的な知識について、以下の内容を中心に判定する。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
日本の中小企業の中でも、製造業や小売業を営む企業が多く、中小企業診断士が顧客として経営助言を行う機会も多くなっています。
そのような製造業・小売業が行う生産・販売をより効率的に行い、生産性を高めるためのオペレーションの改善策・実施施策を学習するのが運営管理(オペレーション・マネジメント)です。
具体的には、生産管理については、「工場のレイアウト」や「生産計画」などのオペレーションについての考え方を学習します。
また販売管理については「店舗のレイアウト」や「仕入・発注方法」などを方法を学習します。
運営管理(オペレーション・マネジメント)の合格率・難易度
運営管理(オペレーション・マネジメント)の、過去18年間の平均は17.4%です。
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成
他の科目と同様に平均合格率が20%を下回る難関試験であることに加え、近年は、合格率が低下している難化傾向にあると言われています。
運営管理では、生産・販売に関する現場レベルのオペレーションが出題の中心であり、専門度の高い知識や計算問題が出題されます。
より専門的な知識や、情報システムを活用した新しいオペレーション管理などの出題が増えて難化傾向にあることも含め、難易度★★★の科目であると言えるでしょう。
二次試験との関連度
運営管理(オペレーション・マネジメント)の二次試験との関連度:★★★
運営管理は、二次試験の「事例Ⅲ」と直結している科目です。
二次試験の「事例Ⅲ」では、主に製造業を営む事例企業が登場し、その企業の生産工程・管理についての現状を読み取ったうえで改善策を助言を記述することが求められます。
特に生産管理の分野については、二次試験での活用も見据えて、入念に学習しておくと良いでしょう。
私の勉強時間と結果
勉強時間:207時間 /1,313時間
試験結果:67点 /100点
私は、製造・販売業務に携わったことが無かったため、内容のイメージが全く湧かずに苦手意識を持っていました。
そのため、インプットの段階から比較的多めに時間を割いて、過去問は直近5年分だけを完璧に仕上げました。
試験本番では、はじめて見る用語も多く出題されましたが、重要論点が定着していたことで6割を超えることができたと考えています。
運営管理(オペレーション・マネジメント)の難しさ
運営管理(オペレーション・マネジメント)の合格を難しくしている原因には、以下が考えられます。
- 生産管理など、実務経験が無いとイメージしにくい内容が多い。
- ちょっとした計算問題が出題されるため対策が必要。
- 作業工程や発注方法など、似たような内容で暗記する量が多い。
- 「CAD」や「SCM」など、近年に主流になりつつある新たな用語も出題される。
運営管理の難しさは、「生産・販売での実務経験が無いと用語のイメージがしにくい」点です。
多くの知識量を暗記しようとするとき、その用語をイメージできるかは暗記の効率に大きく影響します。
運営管理で出題されるオペレーションに関する知識は現場レベルで活用されるものですので、実務経験が無いとその活用イメージが湧きにくいことが難点です。
また、情報システムを用いた新たな管理手法などが登場しており、過去に出題例のない知識が本番に登場することも増えており、万全な対策が難しくなっています
効果的に学習を進めるコツ
運営管理(オペレーション・マネジメント)の特徴を踏まえて、効果的に学習を進める上で意識するべきポイントは以下の通りです。
- 重要論点に絞ったインプットを進めていく。
- イメージが湧かないときは、ネットで検索してイメージを掴む。
- 計算問題の対策は、演習を積むことで慣れていく。
- テキスト・過去問に無い用語が出ても、持っている知識で対応できる。
運営管理の学習を進める上で意識するべきポイントは、「ネットを活用しつつイメージを掴みながら、重要論点に絞った学習を進めること」です。
運営管理では、特にはじめて見る用語の出題が多くなっている傾向にありますが、頻出・重要論点さえ確実に抑えていれば6割を超えることは可能な試験となっています。
そして重要論点については、テキストに記載がある内容だけに集中して学習すれば必要な知識のインプットは十分です。
ネットで画像や図解を調べてイメージを掴みながら重要論点の理解を深めること、計算問題については繰り返し演習で慣れておくことが、運営管理で安定して6割を取るために有効な学習となるでしょう。
経営法務
次に、5科目目の「経営法務」です。
経営法務の概要
経営法務では、企業が経営を行う上で守らなければならない「会社法」などの法律・条文を学習し、法規制に基づく正しい経営助言を行うための基礎知識を身に付けることが目的となる科目です。
創業者、中小企業経営者に助言を行う際に、企業経営に関係する法律、諸制度、手続等に関する実務的な知識を身につける必要がある。また、さらに専門的な内容に関しては、経営支援において必要に応じて弁護士等の有資格者を活用することが想定されることから、有資格者に橋渡しするための最低限の実務知識を有していることが求められる。このため、企業の経営に関する法務について、以下の内容を中心に基本的な知識を判定する。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
中小企業診断士は、経営者の方々が抱える悩み・課題を解決するために、必要な経営助言を法律の知識を踏まえながら行うことに加え、専門領域については弁護士などの専門家とのパイプラインになることが求められます。
もし仮に、会社経営についての法律知識がないままコンサルティングを行うと、クライアントを予期せぬトラブルに巻き込んでしまう可能性があるでしょう。
具体的には、「会社法」や「民法」、「知的財産権」など、中小企業が経営を行う上で関連する幅広い法律が試験範囲となっています。
経営法務の合格率・難易度
経営法務の、過去18年間の合格率平均は14.9%です。
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成
約15%の合格率となっており、全7科目の中でも特に難しい試験と言えます。
やはり、法律について馴染みが無いと、幅広く細かい法律・条文を暗記するだけでもかなりの時間・労力が必要になってきます。
暗記が得意な方でも、法律独特の表現や例外など、想定以上に時間がかかる可能性もあるでしょう。
近年の出題傾向や合格率を加味すると、難易度★★☆の試験科目と言えます。
二次試験との関連度
経営法務の二次試験との関連度:★☆☆
経営法務は、二次試験との関連性はほとんどありません。
あくまで一次試験を突破できるように、頻出の法律をしっかりと理解することに焦点を当てて学習を進めましょう。
私の勉強時間と結果
勉強時間:229時間 /1,313時間
試験結果:84点 /100点
私自身は、暗記が得意だと自覚していたこともあり、経営法務にはそこまで多くの時間を割く予定はありませんでした。
しかし、法律の条文が持つ特有の固い表現・例外に苦戦し、結果的に最も勉強時間を要した科目となってしまいました。
勉強内容としては、テキスト・過去問に登場する重要な論点に絞って学習を進めたことが、高得点に繋がった要因だと考えています。
経営法務の難しさ
経営法務の合格を難しくしている原因には、以下が考えられます。
- 覚えなければならない法律・条文が多い。
- 法律特有の似たような文章や数字の違いなど、なかなか暗記が捗らない。
- 法律条文の「例外」が厄介。
- 選択肢のうち1つは、はじめて聞く内容が含まれていることが多い。
経営法務の学習を難しくしている最大の要因は、微妙な数値の違いや例外が存在し、覚えるべき知識量が多いことでしょう。
法律は、条文によってルールが規定されていても、「~の場合は適用されない」などというような「例外」が存在します。
また、「その事実を知ったときから○○年以内」など、条文によって微妙に数値や条件が異なっていることも多いです。
このように、法律・条文を暗記する際には、その法律が規定する内容について、細かな数字や条件・例外までセットで覚えなければならず、スムーズに学習を進めることが難しいのです。
効果的に学習を進めるコツ
経営法務の特徴を踏まえて、効果的に学習を進める上で意識するべきポイントは以下の通りです。
- 暗記カードなどを作って、効率的に暗記を進める工夫をする。
- 「例外」については、テキストに出てくるものだけ覚えておけば十分。
- 「会社法」と「知的財産権」を中心に学習を進める。
- 「英文問題」は英語が少しでも読めるなら捨てない方がお得。
経営法務の攻略で最も意識するべきなのが、「会社法」と「知的財産権」の2つを中心的に学習することです。
実は、経営法務の過去の出題を見てみると、この「会社法」と「知的財産権」からの出題が全体の6割を占めていることが多くなっています。
経営に関連するすべての法律を完璧にマスターすることは不可能ですし、試験に必要のない知識は覚える必要はありません。
そのため、「会社法」と「知的財産権」の2つを中心とするテキストに記載のある内容を、暗記カードなどを活用して効率的に覚えていくことが、最も効率的に学習を進めるカギとなります。
経営情報システム
次に、6科目目の「経営情報システム」についてお話しします。
経営情報システムの概要
経営情報システムでは、経営の様々な場面で活用される「情報通信技術」いわば「IT」に関する知識を学習し、情報通信技術を活用した経営助言を行い、企業の生産性・業績向上のサポートができるようになることが目的です。
情報通信技術の発展、普及により、経営のあらゆる場面において情報システムの活用が重要となっており、情報通信技術に関する知識を身につける必要がある。また、情報システムを経営戦略・企業革新と結びつけ、経営資源として効果的に活用できるよう適切な助言を行うとともに、必要に応じて、情報システムに関する専門家に橋渡しを行うことが想定される。このため、経営情報システム全般について、以下の内容を中心に基礎的な知識を判定する。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
近年の急速な情報通信技術の発展・普及を受けて、中小企業経営においても、これらの技術を活用するシーンが増えています。
経営情報システムで学習する具体的な内容は、コンピュータシステムの構造や仕組みを理解する「情報通信技術に関する基礎的知識」と、システムを運用・管理する「経営情報管理」から構成されています。
「情報通信技術に関する基礎的知識」では、ハードウェアやネットワークなどの、いわば情報通信技術そのものを学ぶ内容となっており、かなり専門度の高い知識の理解が求められます。
また、「経営情報管理」では、情報通信技術を実際の経営に結びつけ、どのように管理・運用していくかの手法を学習します。
もはや情報通信技術を活用した経営は当たり前になりつつあるため、今後ますます重要度の高くなると考えられる科目です。
経営情報システムの合格率・難易度
経営情報システムの、過去18年間の合格率平均は19.9%です。
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成
他の科目と比較すると、僅かですが合格率は高めですが、経営情報システムも平均合格率が20%を下回る難しい試験です。
さらに、近年の経営情報システムでは、情報技術の発展に合わせて登場する新たなシステムがタイムリーに出題され、過去問でも見たことが無い用語がとにかくたくさん登場しており、難化傾向にあることが特徴です。
学習する内容の専門性が高いだけでなく、過去問で対策することが難しい新たな用語の出題が多いことを踏まえると、難易度★★☆の試験科目と言えます。
二次試験との関連度
経営情報システムの二次試験との関連度:★★☆
経営情報システムは、特定の事例に直結しているわけではありません。
しかし、情報システムを活用して生産性を高める施策は、どの事例でも助言として記述することができます。
二次試験の対策まで加味するのであれば、会社の生産性向上・課題解決に繋がるシステムを知っておくことで、二次試験で記述することのできる武器となるでしょう。
私の勉強時間と結果
勉強時間:172時間 /1,313時間
試験結果:68点 /100点
私は、メーカーでコンサル営業をしていたので、情報システムについての知識は一切ありませんでした。
そのため、見慣れない情報通信技術に関する専門知識の暗記に多くの時間を割くことが必要でした。
また、テキストに記載のある知識については定着した状態で本番に臨みましたが、実際の試験では半分くらいが見たこともない用語からの出題で非常に焦ったことを覚えています。
重要論点を確実に得点できたことや、定着していた知識を使って選択肢を絞りきれたことが、合格点に到達できた要因だと考えています。
経営情報システムの難しさ
経営情報システムの合格を難しくしている原因には、以下が考えられます。
- 見慣れない・聞き慣れない情報システムに関する専門用語を暗記しなければない。
- 「UDP」や「DHCP」など、アルファベット3~4文字の用語が多く暗記が捗りにくい。
- テキスト・過去問に掲載が無い最新の情報システムについても出題される。
- 選択肢のうち1つは知らない用語が出てくるため、絞り切るスキルが必要。
経営情報システムの難しさは、「出題内容の専門性の高さ」や「はじめて見る専門性の高い用語の出題」が挙げられます。
情報システムに触れたことが無い場合、馴染みの無い専門性の高い用語に対して、紛らわしいアルファベットやカタカナ用語をうまく整理して覚えなければなりません。
また、本番では知らない用語が多く登場するため、学習した知識を使って選択肢を絞っていき、正解を導くスキルが必要になってきます。
効果的に学習を進めるコツ
経営情報システムの特徴を踏まえ、効果的に学習を進める上で意識するべきポイントは以下の通りです。
- テキストに記載のある重要論点を最優先で学習する
- 語呂合わせや暗記シート・アプリを使って暗記方法を工夫する。
- 紛らわしいアルファベットは、英語の意味から理解して暗記する。
- 知らない用語は表れるものだと割り切って、テキストの内容を完璧にすることを優先する。
経営情報システムの学習を進める上で意識するべきは、「重要論点の学習に集中し、知らない用語に深入りしない」ことです。
経営情報システムでは、いくら過去問を対策しても、本番で知らない用語が出題されることは避けられません。
しかし、試験問題の構成を見ると、選択肢の中に知らない用語が含まれていても、他の選択肢は重要論点が定着していれば正誤が判断できるようになっています。
そのため、とにかく重要論点に関する出題は得点源とし、知らない用語が登場しても、知っている知識を活用して選択肢を絞ることで正答率を高める戦略が効果的です。
中小企業経営・政策
最後に、7科目目「中小企業経営・政策」についてお話しします。
中小企業経営・政策の概要
中小企業経営・政策では、中小企業が持つ企業体としての特徴・置かれている環境、中小企業に対する支援策を学習し、中小企業に特化したコンサルタントとしてより活動する上で実務的な知識の会得を目的とする科目です。
中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタントとしての役割を期待されており、中小企業経営の特徴を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・助言を行う必要がある。そこで、企業経営の実態や各種統計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や経営における大企業との相違を把握する必要がある。また、創業や中小企業経営の診断・助言を行う際には、国や地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて適切に活用することが有効である。このため、中小企業の経営や中小企業政策全般について、以下の内容を中心に知識を判定する。
【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)
「中小企業診断士として、中小企業のことや支援策は知っておくべき」という科目であり、中小企業経営と中小企業政策の2つの出題範囲から構成されています。
中小企業経営では、毎年中小企業庁が発表している「中小企業白書」や「小規模企業白書」から、直近の中小企業の動向や環境について把握できているかを問われます。
また、中小企業政策では、中小企業の定義から、中小企業に対する支援活動を行う機関・具体的な支援策についてを学習します。
中小企業経営・政策の合格率、難易度
中小企業経営・政策の、過去18年間の合格率平均は16.7%です。
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成
他の科目と同様に、平均合格率が20%を下回る難関試験です。
さらに、他の科目と比較しても年度ごとの合格率に大きな差があることも特徴的です。
中小企業経営・政策で問われる内容は、「中小企業に関することどれだけ知っているか」を問うものですので、そこまで深入り理解を必要としない科目でもあります。
それゆえ、あまり時間をかけずに合格を目指す方も多い科目です。
しかし、他の科目と同様に低い合格率を推移しているため、油断せずにしっかり対策を行うべき難易度★★☆の科目です。
二次試験との関連度
中小企業経営・政策の二次試験との関連度:★☆☆
中小企業経営・政策は、二次試験との関連性はありません。
二次試験では、補助金などの具体的な支援策を記述することはないので、一次試験を突破するための知識をつけることに集中し、なるべく時間をかけずに攻略したい科目です。
私の勉強時間と結果
勉強時間:152時間 /1,313時間
試験結果:80点 /100点
私は、中小企業経営の対策として、テキストに掲載されている重要な箇所は完璧に暗記した上で、中小企業白書も一通り読みました。
また、中小企業政策の対策には、テキストに掲載されている支援機関・支援策についてかなり詳細に暗記していました。
勉強時間の多くをテキストに記載のあることを暗記することに割き、かつ白書全体にも目を通していたことが、高得点に繋がった要因だと考えています。
中小企業経営・政策の難しさ
中小企業経営・政策の合格を難しくしている原因には、以下のようなことが考えられます。
- 中小企業白書のページ数が多く、どこが重要なのか分かりにくい。
- 支援機関・支援策については、条件や金額が異なり紛らわしい。
- 中小企業経営(過去問の前半)は、年度によって内容が異なるため過去問対策ができない。
中小企業経営・政策の難しさは、「中小企業経営」と「中小企業政策」でそれぞれ異なります。
まず、「中小企業経営」に関しては、白書が長すぎてどこが重要なのか分かりにくいことに加え、過去問での対策ができないことです。
中小企業白書だけでも全900ページほどのボリュームですし、かつ小規模企業白書からの出題もあるため、すべてを読み切って暗記することは不可能で、重要な箇所を精査する必要があります。
また、白書は毎年記載内容が変わるため、過去問を解いても内容が全然違うのであまり意味が無く、演習ができないことも難しさの原因となっています。
次に、「中小企業政策」に関しては、支援機関名・支援策によって適用条件や数値が微妙に異なっており、暗記が捗りにくい内容となっていることが挙げられます。
中小企業政策に出題される支援策などは、年度のよって内容が変わるものではないため得点源にしたいところですが、細かな数字やややこしい名称を暗記するための時間・労力が必要になります。
効果的に学習を進めるコツ
中小企業経営・政策の特徴を踏まえ、効果的に学習を進める上で意識するべきポイントは以下の通りです。
- 中小企業白書の中でも、テキストに記載のある箇所だけを完璧に覚える。
- スキマ時間や勉強の合間に、読書感覚で中小企業白書を読んでおく。
- 中小企業政策は「中小企業の定義」や「支援機関・支援策」を得点源にする。
中小企業経営・政策の攻略のポイントは、「最新版のテキストを一冊完璧にする」ことが最も簡単で効率的です。
やはり、過去も出題傾向を分析した上で掲載内容を精査しているテキストは、白書の中でも出題される可能性をピックアップしていますし、頻出の支援機関・支援策についても抜け漏れなく掲載があります。
全7科目をバランスよく学習しなければならない中で、白書すべてに目を通して覚えるべき箇所を精査する時間はとてももったいないです。
とにかく、最新版のテキストを一冊完璧にマスターすることに集中し、もしスキマ時間などか活用できるのであれば、読書感覚で白書全体に目を通しておくことがオススメです。
私が使っていたテキスト・アプリ等
ここまで、一次試験の全7科目について、それぞれの難易度・合格率から、学習を進めるうえでのポイントについてお話ししました。
ここでは、学習を進めるうえでオススメのテキストやツールについてご紹介します。
テキスト
一次試験対策には、TAC出版のテキスト・問題集・過去問の3点セットを全7科目分使用しました。
ます、1か月で1科目分のテキスト・問題集を完璧にします。
そして、7か月間で全7科目分テキスト・問題集が終わったら、8か月目から本番まで過去問を解き続けました。
以下、大まかな学習の進め方と、それぞれのプロセスでのポイントをお話しします。
まずは、各科目ごとにテキストを使ってのインプットを行います。
各科目ごとに、上述した攻略のポイントを意識しながら学習を進めていきましょう。
やはり、知識に必要な知識は、テキストにすべて集約されています。
最短での合格を目指す第一歩であり最も重要なのが、一冊のテキストを完璧にマスターすることです。
中でも、TAC出版に「スピードテキスト」は、多くの受験者に愛用されている王道のテキストです。
過去の出題実績に基づく独自の分析に基づいた、合格に必要な知識が向け漏れなく掲載されていることが最大の魅力です。
レイアウトの見やすさや解説の丁寧さも秀逸ですので、文句なしでオススメできる一冊となっています。
それぞれの科目について、テキストでインプットを進めながら、一章(内容の区切り)が終わったタイミングで問題集を解いていました。
早い段階でアウトプットの機会を設けることで、覚えた知識が試験でどのように問われるかを把握でき、実践レベルに知識の理解度を深めることができるためオススメです。
問題集に関しても、TAC出版のテキストとセットの「スピード問題集」を使用していました。
分野・内容ごとに問題がもれなく掲載されているため、すべての知識でアウトプットする機会を設けることができます。
問題自体も過去問に即したものが多く、実践形式に近しい形での演習が進められることも魅力的です。
ここまでのプロセスを、1か月で1科目(計7か月)行った後に、過去問演習に入ります。
テキストと問題集での学習が全7科目終わり次第、過去問を解き続けましょう。
中小企業診断士の一次試験は、全7科目で総合的に60点以上を獲得する必要があるため、各科目が終わったタイミングで過去問を解くのではなく、すべての科目の学習が終わったタイミングで一気に解く方が実践に近しい形で過去問を活用できるためです。
私は直近5年分の過去問を何度も解いて、間違えた箇所だけ見返すように復習していました。
過去問についても、TAC出版の「過去問題集」がオススメです。
直近5年分の過去問が掲載されており、重要論点はもちろん、テキストに記載の無い知識まで詳細な解説が掲載されています。
また、出版社独自のリサーチによる、問題ごとの正答率・ランク付けが付されており、取るべき問題・落としても良い問題の区別をつけやすいことも、学習をスムーズに進めることに繋がります。
アプリ
勉強時間の管理には、「Studyplus(スタディプラス)」がオススメです。
多くの受験生が勉強時間を管理するときに使っているアプリで、科目別の勉強時間やテキストに応じて分類したり、簡単な操作で記録ができます。
勉強計画を立てたり、モチベーション維持のためにも勉強時間を記録することをオススメします。
暗記科目の勉強を進めるときには、「FlashCard(フラッシュカード)」がオススメです。
「FlashCard(フラッシュカード)」は、自分の好きなスタイルの暗記カードを作成できるアプリです。
スマホで暗記カードを作っておくことで、通勤や休憩時間などのスキマ時間を活用して暗記を進めることができます。
まとめ
当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、中小企業診断士試験・一次試験について、科目ごとの難易度や合格率から、各科目の学習を進めるうえでのポイントについて解説しました。
記事の中でもお話ししました通り、中小企業診断士の一次試験は、各科目ごとに見ても合格率が20%を下回る、非常に難しい試験です。
また、中小企業診断士の受験勉強をされている方々の多くは、会社員として働きながら、家庭や子育てと両立しながら学習を進めるなど、限られた時間の中で勉強を進めています。
このような資格だからこそ、試験の概要や科目ごとの難易度を踏まえた効果的な学習方法を知り、戦略的に学習を進めることが合格には欠かせません。
この記事が、中小企業診断士の学習を進めるうえで少しでも参考になれば幸いです。
他にも、中小企業診断士試験の攻略法・勉強のコツなどについての記事を発信していますので、お時間があれば是非チェックしてみてください。
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