【運営管理】生産情報システム(製造)要点整理|SCMとERPの違いは答えられますか?

中小企業診断士の一次試験科目である運営管理には、「生産情報システム」という分野が出題されています。

「生産情報システム」では、生産現場の効率化・全体最適のサプライチェーン構築のために、どのような情報通信技術を活用することができるかを問われるものであり、情報通信技術の進歩の中で活用の重要性が高まっている重要論点です。

しかし、知識が現場で活用されることのイメージが難しいことや、「MC」や「CIM」などの紛らわしいアルファベットがたくさん登場するため、対策が捗りにくいことも事実です。

この記事では、「生産情報システム」に関して、登場するそれぞれの用語の特徴や違いを解説しています。

限られた時間の中で必要な知識を身に付けるため、運営管理の問題で問われる内容の正誤判断に必要な知識に絞って解説します。

生産情報システムが苦手な方・もう一度整理しておきたい方は是非読んでみてくださいね。

この記事でわかること
  • 「生産情報システム」における製造分野の全体像
  • 「マシニングセンタ」や「FMS・FMC」などの用語の整理
  • 「CIM」に代わる「SCM」や「ERP」について
  • 生産情報システムの過去問と解説
目次

システムの全体像

まずはじめに、「自動製造システム」の全体像を理解しておきましょう。

自動製造システムは、ひとつひとつの工程を自動化する「NC工作機械」に始まり、開発・物流・財務などの企業活動全体を制御・管理する「CIM(Computer Integrated Manufacturing)」に至るまで、各段階で機械やシステムを使って自動化を進めていきます。

それぞれの用語が、どの段階での自動化を目指しているものなのかを整理することが重要です。

以降では、診断士試験の正誤問題で正答できることを目指して、それぞれの用語の特徴や違いについて解説していきます。

NC工作機械

まずは、「NC工作機械」について解説します。

NC(Numerical Control)とは、「数値制御」のことであり、必要となる工具の順番・作業工程について、数値情報で指示を出します。

そして、この数値制御機能を備えた工作機械を「NC工作機械」と言います。

NC工作機械には、切断などの加工に用いられる「NC旋盤」や、穴あけ加工に用いられる「NCボール盤」などがあります。

【引用】シチズン時計・CITIZEN・シチズンマシナリーNC旋盤(クシ刃型)(工作機械)の商品詳細
中古機械の買取・整備・販売 東信機工株式会社 (t-mt.com)

NC工作機械が登場する前は、「汎用工作機械」と呼ばれる手動加工が行われていました。

NC工作機械を用いることで、複雑な加工工程でも自動化することができ、省力化が実現できるようになります。

また、数値制御に基づく繰り返し精度が高いため、均一な品質が担保されたり、検品作業が楽になるなどのメリットもあります。

「CNC(Computer Numerical Contorol)」との違い
「CNC工作機械」とは、コンピュータ(C)による数値制御機能(NC)を搭載したNC工作機械のことを指します。現在では、コンピュータによる数値制御を行うものが主流となっており、NC工作機械と言えばCNC工作機械のことを指していることが多いと言われています。

「DNC(Distributed Numericarl Contorol)」とは
「DNC」とは、ひとつのコンピュータで複数のNC工作機械に統括的に数値制御する方式です。「CNC工作機械」ではそれぞれの工作機械にコンピュータを搭載していましたが、「DNC」ではひとつのコンピュータで全体を管理するため、さらに品質が均一、かつ効率的な製造を行うことができます。

「CNC」や「DNC」は、NC工作機械の最新版のようなものです。今後出題される可能性は十分にあり得るので、余裕があれば頭に入れておくといいかもしれません。

NC工作機械
  • 「NC工作機械」とは、数値制御(NC)を備えた工作機械
  • NC工作機械を用いることで、省力化のみならず、品質の均一化や検品作業の手間が削減できる
  • 近年では、コンピュータによる数値制御を備えた「CNC工作機械」や「DNC」が主流になっている

マシニングセンタ

次に、「マシニングセンタ」について解説していきます。

マシニングセンタ(MC:Machining Center)とは、切断・穴あけ・平面加工などの多種類の加工を連続で行うことができるNC工作機械のことを指します。

NC旋盤なら切断、NCボール盤なら穴あけなど、ひとつのNC工作機械は特定の加工工程を自動化していました。

一方、マシニングセンタでは複数の工具を備え、必要な加工工程に合わせて自動的に使い分けることができるものです。

そして、この様々な工程を使い分けることができる機能を実現しているのが、「ATC(Automatic Tool Changer:自動工具交換装置)」です。

【引用】マシニングセンターとATC | 株式会社ジェイネット (jng.co.jp)

ATC(自動工具交換装置)には、20から70種類の工具が装備されており、これらの工具を必要に応じて使い分けることができます。

このように、マシニングセンタを用いることで、ひとつの機械の導入のみで複数の工程を自動的に行うことができるようになり、設備点検の労力の削減など、更なる省力化・コストダウンに繋がるメリットがあります。

マシニングセンタ
  • 「マシニングセンタ」とは、多種類の加工を連続で行うことができるNC工作機械
  • マシニングセンタは、「ATC(自動工具交換装置)」によって他工程の自動化を実現している
  • ひとつの工作機械が多種類の加工を担うことで、省力化やコストダウンが図れる

FMC(フレキシブル加工セル)とFMS(柔構造製造システム)

FMC(Flexible Manufacturing Cell:フレキシブル加工セル)とは、複数のNC工作機械やマシニングセンタを組み合わせたものであり、工程にひとまとまりをカバーしています。

そして、FMS(Flexble Manufacturing System:柔構造製造システム)とは、部材の投入から加工や組み立て、検査に完成品の搬送までの生産設備全体をコンピュータで統括的に管理するシステムのことです。

画像でイメージすると以下の通りです。

FMCは、それぞれの加工工程のまとまりを複数の工作機械でカバーします。

そして、それぞれのFMCをコンピュータで統括的に制御するシステムがFMSです。

FMC間の運搬についても自動化するために、AGV(Automatic Guided Vehicle:無人運送車)が用いられる点も押さえておきましょう。

FMCとFMSを導入するメリットには以下が挙げられます。

・加工・組立・検査から搬送まで全工程を自動化し、大幅な省力化が図れる
・ライン内で自動切り替えが行えるため、多品種少量の柔軟な生産ができる
・工程全体をコンピュータで管理することで、生産状況や不良を可視化できる

FMC・FMS
  • 「FMC」は、複数のNC工作機械やマシニングセンタを組み合わせたもの
  • 「FMS」とは、生産設備全体をコンピュータで統括的に管理するシステム
  • 運搬も自動化するために、「AGV(無人運送車)」が用いられる
  • 工程全体の一元管理により、多品種少量生産が可能な柔軟な生産体制を構築できる

FA(Factory Automation)

FA(Factory Automation)とは、材料調達やデータ管理など、工場全体の作業すべてを自動化・システム化することです。

FMSは、生産工程のみを統括的に制御していました。

一方、FAでは、生産に直接関わらない間接業務までを管理の対象としている点で異なっています。

【引用】FAシステム – 山陰三菱電機機器販売株式会社 | 三菱電機グループ (melsanin.co.jp)

FAでは、CAD/CAMやPDMなどの生産情報システムはもちろんのこと、AIやIoT技術を搭載した機器を導入されることもあります。

AIが良品・不良品の判定を学習することで検品の精度が格段に上昇するなど、様々な工程で活用されています。

ここまで自動化が進むと、人間が行わなければならない仕事は補助業務のみです。製造業の人手不足やグローバル化による価格競争が激化する中で、人件費の削減や品質の向上に大きく貢献できます。

しかし、FAを導入するには設備投資に多大なコストがかかってしまいます。

中小企業では賄えない場合は、その企業のボトルネックに合わせた必要な箇所から優先的に自動化を進めていく提案が望ましいでしょう。

FA(Factory Automation)
  • 「FA」とは、生産工程に限らず、工場全体のすべての作業を自動化・システム化すること
  • 近年では、CAD/CAMのみならず、AIやIoTが導入されることも多い
  • 企業のボトルネックに合わせて、必要な箇所から自動化を進めていくことが望ましい

CIM(Computer Integrated Manufacturing)

CIM(Computer Integrated Manufacturing)とは、工場の管理のみならず、開発や販売などの企業レベルでの業務すべてを対象としたシステム化のことです。

FAは「工場全体の自動化・システム化」であり、製造を行う工場全体を管理しています。

一方で、CIMは「企業レベルでの業務すべてを自動化・システム化」を図る点で異なります。

つまり、企業の経営目標の達成のために、様々な企業情報を考慮しながら生産活動を行うのがCIMです。

中小企業診断士の試験では、CIMという言葉が出題される可能性はありますが、近年ではCIMに代わり、「SCM(Supply Chain Management)「ERP(Enterprise Resource Planning)」という言葉が用いられています。

「SCM」とは
SCM(Supply Chain Management)とは、原材料の調達から最終製品の配送までのサプライチェーン全体を管理することです。SCMでは、企業内の供給・製造・販売部門はもちろん、企業外のサプライヤーや物流業者も含めてすべてのプロセスをネットワークで結ぶことで、サプライチェーン全体の最適化・効率化を目指しています。

「ERP」とは
ERP(Enterprise Resource Planning)は、財務、人事、生産、在庫管理、購買、販売など企業全体のあらゆる業務を統合的に管理し、各部門間の情報共有と連携を促進することです。ERPでは、主に企業内の業務プロセスの効率化と情報の一元化に焦点を当て、内部プロセスを効率化して生産性を高めることを目指しています。

「SCM」は企業外も含むサプライチェーン全体の最適化を、「ERP」は企業内の業務プロセスの効率化・生産性向上を目指している点で異なります。

CIM(Computer Integrated Manufacturing)
  • 「CIM」とは、製造のみならず、開発や販売など企業レベルでの業務すべてを対象としたシステム化
  • 近年では、CIMに代わって「SCM」や「ERP」が用いれれることが多い
  • 「SCM」は企業外を含むサプライチェーン全体を、「ERP」は企業内業務に焦点を当てている

診断士試験の過去問と解説

具体的に、過去問を見てどのように出題されるかをチェックしましょう。

平成30年度 第5問

平成30年度 第5問

マシニングセンタに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア:工作物を回転させ、主としてバイトなどの静止工具を使用して、外丸削り、中ぐり、突切り、正面削り、ねじ切りなどの切削加工を行う工作機械。

イ:異なる機能をもつ数台から数十台の工作機械を等間隔、かつ、直線状に配置し、それらを搬送装置で結合した工作機械群。

ウ: 自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行できる、産業に使用される機械。

エ:主として回転工具を使用し、フライス削り、中ぐり、穴あけおよびねじ立てを含む複数の切削加工ができ、かつ、加工プログラムに従って工具を自動交換できる数値制御工作機械。

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解答解説

ア:適切ではない
工作物を回転させ、主としてバイトなどの静止工具を使用して、外丸削り、中ぐり、突切り、正面削り、ねじ切りなどの切削加工を行う工作機械。

➤➤この選択肢は「旋盤」の説明になっています。マシニングセンタは、旋盤としての切削加工のみならず、穴あけや平面加工などの複数の工程を自動化できるのが特徴です。

イ:適切ではない
異なる機能をもつ数台から数十台の工作機械を等間隔、かつ、直線状に配置し、それらを搬送装置で結合した工作機械群。

➤➤この選択肢は「トランスファーマシン」の説明になっています。トランスファーマシンとは、あくまで工作機械群であり複数の工作機械の組み合わせですが、マシニングセンタはひとつの工作機械で複数の工程を行うことができるものです。

ウ:適切ではない
自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行できる、産業に使用される機械。

➤➤この選択肢は「産業用ロボット」の説明になっています。マニピュレーション機能とは、人間の腕や手のような動作で加工を行う機能のことであり、マシニングセンタにはマニピュレーション機能や移動機能は搭載されていません。

エ:適切である
主として回転工具を使用し、フライス削り、中ぐり、穴あけおよびねじ立てを含む複数の切削加工ができ、かつ、加工プログラムに従って工具を自動交換できる数値制御工作機械。

➤➤マシニングセンタの説明になっているため正解です。「主に回転工具を使用」や「工具を自動交換できる数値制御機械装置」という文言は押さえておきましょう。

まとめ

当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今回は、中小企業診断士・一次試験の運営管理で頻出の内容である「生産情報システム」について、それぞれの用語の特徴や違いについて解説しました。

情報通信技術が発展することで、工場での製造業務も機会を活用して自動化したり、サプライチェーン全体をコンピュータで一元管理するなど、生産情報システムを活用する場面はますます増えています。

中小企業診断士試験でも出題可能性が高まる内容ですので、改めて理解を深めておくべき内容です。

この記事が、少しでも皆様が学習を進める中での手助けになれば幸いす。

他にも、中小企業診断士試験を最短で合格するために役立つ記事を発信していますので、是非チェックしてみてください。

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